7月22日
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7月22日木曜日。
天気は晴れ。
3回目のアラームで目を覚ました。
既に外は全力の朝で、
その光はカーテンの間を縫って
部屋の無機質なデスクを照らしていた。
早々と支度を済ませ、
いつもの葛西駅からいつもの東西線に乗る。
平日は背広どもでごった返す車内も、
今日はまずまずと言ったところ。
本日、祝日である。
いつものように大手町駅で下車した。
普段通りの時間、普段通りの路線。
ただ今日は通勤のために丸の内線に乗り換える、
なんてダサいことはしない。
東京駅へ向かう。
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東京駅のホームで新幹線を待った。
反対の路線には長蛇の列ができている。
金沢行きだそうだ。
目的の新幹線が乗り入れるまで、
しばらく待ってみたが、
待機の列がわざとらしい夏の日光に晒されており、
耐えかねた私は、喫煙所に向かった。
喫煙所は興味深い。
ぱっと見ただけでも、本当に多様な人がいる。
髪色を見ても、金髪、黒髪、プリン頭。
服装を見ても、清楚系、湘南系、メンヘラ系。
一生で絶対に交わることのない人同士が、
タバコを媒体として、喫煙所という共同空間にいる。
喫煙所から出ればもう赤の他人。
しかし、喫煙所にいるときは同じ「喫煙者」なのだ。
そんな生産性のないことを考えているうちに、
ロボットみたいな、いかにも日本的で
抑揚のない声のアナウンスが新幹線の到着を知らせた。
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乗車し、「窓側席 2A」に座る。
前席の女子3人組は社会人とも女学生とも見えるが、
どちらにせよ久々の旅行のようだ。
これから行く観光名所や、世間話に興じている。
また時々、窓から見える風景に一喜一憂している。
途中で開けた弁当の匂いが辺りに充満している。
上野駅で私の後ろの席に座ったカップルのうち、
男の方は自分の取るに足らない知識を
ひけらかして悦に浸っている。
聞き耳を立てる気も起こらないので、
話の詳細はわからない。
ただ話し方からして十中八九、
つまらない頭から搾り出した
つまらない自慢話だ。
スーパーで買ったぶどうをどれだけ搾っても、
ワインが出てくることはない。
そして例に漏れず、
自分もぶどうの一粒だ。
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熊谷駅を過ぎたあたりから、
窓から見える建物の高さが低くなり、
数もまばらになってきた。
前の女子3人組の会話の議題が
いつの間にか職場の愚痴に変わっていた。
どうやら社会人のようだ。
毎日お勤め、ご苦労様です。
丁度いい気温と、心地よい揺れを感じながら、
次第に景色が遠くなっていった。